特殊支配同族会社関連別表の書き方
平成18年度税制改正に伴い、特殊支配同族会社税制がスタートしました。
この税制は、平成18年5月1日から施行された新会社法により法人設立時の最低資本金制度が撤廃されたのに伴い、
節税目的の法人成りを抑止する目的でスタートしたものですが、既に周知のように制度自体が難解で複雑です。
  ご注意: 特殊支配同族会社税制は、平成22年度税制改正により廃止されました。
        「税理士いらず」23年度版では、会計期間の期末日が、平成22年4月1日以降場合、もしくは、
        申告書様式として、22年度様式または、23年度様式を選択した場合には、
        会社基本情報メニューでは、「特殊支配同族会社に該当する」のチェック欄が無効になり、
        別表十四(一)および、別表十四(一)付表は作成しません。
「税理士いらず」は、小規模法人様を対象として開発された税務会計ソフトですので、「税理士いらず」をご利用になる
お客様の多くが特殊支配同族会社に該当することが想定されたため、弊社では当初予定された販売開始時期を延期して
特殊支配同族会社関連別表の対応開発をいたしましたが、本来が難解な別表であることから、現状では、
一部の記述項目(特に、別表十四(一)付表)については、お客様の判断で記述していただく形式となっております。
しかし、弊社ホームページのアクセスログ解析やお問合せなどからも、多くの小規模法人様が、いかに、この別表の
記述方法に戸惑っているかが、よく分かります。
ここでは、「税理士いらず」をご利用になって、別表十四(一)別表十四(一)付表を記述する手順を順を追って、
ご説明します。
なお、ここでのご説明は、税務申告知識にあまり詳しくない「税理士いらず」をご利用のお客様を対象として、
一般的なケースについてのご説明となっていますので、一部、厳密性に欠ける部分があることをご了承ください。
個別のケースについての記述方法などについては、税務署にお尋ねください。
また、以下の記述手順は、特殊支配同族会社関連別表の記述に着目し、かつ、平成20年3月期決算法人の場合
想定していますので、ご留意ください。
前提知識: 特殊支配同族会社税制について
特殊支配同族会社税制は、難解ではありますが、ソフトウェアを利用しての記述とはいえ、自力で、別表十四(一)別表十四(一)付表
記述するためには、最低限の理解は必要とします。
そこで、ご説明に厳密性が欠ける部分があることを承知の上で、カンタンにご説明します。
(なお、ユーザサポートなどでは、税制の解釈方法等についてはお答えできませんので、予めご了承ください)
特殊支配同族会社とは?
厳密な判定基準は別にありますが、概念的には、1人会社もしくは、親族だけで経営権を握っている会社です。
このような会社の場合、恣意的操作により、役員給与を多く計上することにより、法人税等を安く抑えることができます。
役員給与を多く計上すれば、その分、源泉所得税をたくさん納めなくてはなりませんが、源泉所得税の税率よりも法人税率の方が
高いので、結果的には、収める税金が安くなるからです。
しかも、法人税申告書で計算された法人の所得金額や法人税額は地方税の算定基準にもなりますので、その節税(もしくは、脱税)効果が
大きいとみなされます。
そこで、代表者(もしくは実際の経営権者)の役員給与が一定水準よりも多すぎる場合には、給与所得控除額部分を損金不算入にする
ことにより、このような恣意的操作を抑止しようというのが、特殊支配同族会社税制です。
しかし、この一定水準をどの程度とみなすか? というところが難しいところで、その基準値を算出するために、別表十四(一)付表
別表十四(一)で、複雑な計算をしています。
業務主宰役員とは?
通常は会社の代表者ですが、必ずしも、代表者ではありません。
これも、また、この税制の理解を難解にしているところですが、簡単に言うと、代表者であろうがなかろうが、会社の実権を握っている
役員ということです。たとえば、高齢のお父さんが代表取締役であっても、実際には経営に関与していなくて、その息子さんが専務取締役
として会社の経営を実質的にみているなら、息子さんの方が 業務主宰役員になります。
基準所得金額とは?
素人的な考え方では、このような規制をする場合に、単純に当期の所得と代表者(業務主宰役員)の当期の役員給与を比較すればいいと
思いますが、特殊支配同族会社税制では、そういう考え方をしていません。
   当期ではなくて、過去の平均値をみる
   代表者の給与と会社の所得を合わせたものが、本当の会社の所得である
とみなしているようです。
そのような考え方から、基準所得金額とは、
   過去3年分の会社の所得と代表者の給与を合算して平均したもの
となっていますが、さらに、その他の調整要素も入っています。
どの程度なら損金不算入になるか?
上述の基準所得金額(会社の所得+社長の給与)が1600万円以下(現在の規定です)なら、それほど高額な給与ではない、
ということで損金不算入にはなりません。
もし、基準所得金額が、1600万円を超える場合でも、3000万円以下である場合には、条件によって変わってきます。
つまり、基準所得金額の中のどの程度の比率を社長の給与にしているか、ということで決めます。
会社の所得がたくさんあるのであれば、それなりに社長の給与が高くてもいいけれど、会社の所得が少ないのに、社長の給与を
高くすれば、それはペナルティという考え方です。
さらに、基準所得金額3000万円を超えるなら、もうこの会社は充分に儲かっているでしょう、という考え方からなのか、
無条件で、損金不算入になります。
このように、3通りのケースによって、損金不算入になるかどうかが判断されるので、計算も複雑になってきます。
しかし、「税理士いらず」をご利用になるお客様のほとんどは、自力で申告書を作成して、税理士報酬を節減したい、というお客様と
想定されますので、弊社の考えでは、「税理士いらず」のほとんどのお客様は、
   特殊支配同族会社ではあるが、損金不算入にはならない
ものと想定されますが、特殊支配同族会社に該当する以上、別表十四(一)別表十四(一)付表の記述が必要になります。
特殊支配同族会社関連別表を作成するためにご用意する必要がある書類や情報
(前期も特殊支配同族会社で、平成20年3月期決算を想定した場合です)
@ 過去3期分の別表四
A 当期と過去3期分の業務主宰役員の給与額
B 前期の別表十四(一)付表(当期が5期目以上の場合)
ここからは、「税理士いらず」で特殊支配同族会社関連別表を記述するための具体的手順のご説明です。
手順1: 会社基本情報での設定
初期利用メニューで、最初に設定する会社基本情報の登録で、特殊支配同族会社に該当するにチェックを付ける必要があります。
このチェックがないと、「税理士いらず」は、別表十四(一)別表十四(一)付表を作成しません。
特殊支配同族会社に該当するかどうかは、右側の一口ヘルプボタンをクリックしてご確認ください。
もし、初期利用メニューで、チェックを忘れた場合には、会社基本情報メニューで設定を変更することができます。
手順2: 当期の業務主宰役員給与額の設定
決算処理メニューで表示される決算書作成ダイアログの未払法人税ボタンをクリックすると、当期納税額と税率の設定ダイアログが
表示されます。このダイアログで、業務主宰役員給与額に当期の業務主宰役員の役員給与額を入力してください。
もし、会社基本情報の設定で、特殊支配同族会社に該当するにチェックが付いていない場合には、この欄への入力はできませんので、
会社基本情報の設定を変更してください。
手順3: 別表十四(一)付表の上段の表(当期が2期目以上の場合)
(基準期間がある場合における前三年基準所得金額の計算)
当期納税額と税率の設定ダイアログで、設定ボタンをクリックすると、別表十五の確認に続いて、 別表十四(一)付表の様式が
表示されます。上段の表の以下の欄を記述する必要があります。(黄色で表示されている欄は、必須入力項目です)
「1」 所得の金額又は欠損金額
過去3期分の各事業年度分について、別表四のもっとも左下の欄の「38 所得金額又は欠損金額」「@ 総額」を記述します。
もし、赤字の場合には、金額の前にマイナス記号(−)を付加します。
この欄は、金額が0であっても記述する必要があります。
「2」 欠損金等の控除額
過去3期分の各事業年度分について、別表四の左下から2番目の欄の「37 欠損金又は災害損失金等の当期控除額」
「@ 総額」を記述します。 別表四のこの欄が未記入(または0)の場合には、記述する必要はありません。
また、この欄に金額を記述するときには、マイナス記号(−)を付加してはいけません。
「3」 業務主宰役員給与額
過去3期分の各事業年度分について、その期の業務主宰役員給与額を下段の黄色の欄に記述します。
記述した業務主宰役員給与額の中に、損金不算入額があるときには、その損金不算入額を上段の「内書き」に記述します。
たとえば、前期の申告で、特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入が発生した場合 には、その損金不算入額を
3行目(当期直前事業年度)の「内書き」に記述します。
手順4: 別表十四(一)付表の下段の表(当期が5期目以上の場合)
(基準期間直前事業年度等の調整繰越欠損金額の計算)
前期の別表十四(一)付表を参照して、以下のように当期の別表十四(一)付表の下段の表に転記します。
前期の別表十四(一)付表の上段の表の「5−@」の金額を
   −>当期の別表十四(一)付表の下段の表の「12−A」と「16−A」へ
前期の別表十四(一)付表の中段の(「8−@」−「8−A」)の金額を
   −>当期の別表十四(一)付表の下段の表の「15−@」と「15−B」へ
当期の下段の表のそれ以外の項目は、20年3月期決算では、記述する必要はありません。
手順5: 別表十四(一)付表の中段の表(当期が5期目以上の場合)
(基準期間内事業年度等の調整所得金額から控除される調整繰越欠損金額の計算)
前期の別表十四(一)付表を参照して、前期の中段の表の「11 差引翌期調整繰越欠損金額」
当期の中段の表の「7 調整繰越欠損金額」の欄にそれぞれの事業年度ごとに転記します。
ただし、この表の左下の「基準期間直前事業年度等」には、手順4で記述した下段の表の「16−A」を転記します。
手順6: 次へボタンをクリックして、役員給与の損金不算入額の確認画面に進みます
手順7: 別表十四(一)の上段の表(特殊支配同族会社の判定)の入力
画面の黄色の項目は、必須入力になります。
「1 期末現在の発行済株式の総数又は出資の総額」には、デフォルト状態では、会社基本情報で設定された
資本金の額が表示されていますので、株式数で表示する場合には変更してください。
この項目を株式数で表示した場合には、右側の「@ 株式数」の欄も、株式数として記述する必要があります。
業務主宰役員の氏名などについては、個別に記述してください。
後は、「11 期末現在の常務に従事する役員の総数」を記述すれば、通常は、その他の項目の記述は不要です。
(種類株式を発行している場合などは、「法人税申告書の記載の手引き」を参照するか、税務署にお尋ねください)
手順8: 損金不算入額の確認
手順7までに入力した項目以外は、「税理士いらず」がすべて引用計算をします。
「税理士いらず」が中段の表(基準期間がある場合等の適用除外の判定)を完成させて、その結果によって、
特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入が発生するかどうかを判断し、損金不算入が発生する場合には、
下段の表(業務主宰役員給与の損金不算入額の計算)を完成させます。
以上で、「税理士いらず」をご利用になって、特殊支配同族会社関連別表を作成する手順は終了ですが、
この手順で、もっとも、分かりにくいのは、別表十四(一)付表中段の表下段の表 の扱いです。
つまり、「過年度欠損金額の調整控除額」に関連する部分ですが、この金額を算出することは、別表十四(一)
「20 前三年基準所得金額」の算出に影響するため、結果的には基準所得金額を低く抑える方向、
つまり、損金不算入が発生しない方向に作用します。
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